家庭と職場、両方がうまくいかなくなる

ただ、その一方で、夫との関係は、徐々にうまくいかなくなっていった。

夫の変わった考え方は、お付き合いしているときは、

それはそれで面白く新鮮でもあった。

だけれども、実際に一緒に暮らすとなったら、

すれ違いが多くなってしまった。

私が、お好み焼きの焼き方が下手で、焦がしてしまった時、

すごい勢いで怒られた。

「そんなに怒らなくたって・・」

とうとう、そんな焦げたのなんて要らないと言って、

焦げたお好み焼きを食べずに、

外に買い物に出かけて行ってしまったことがあったり。

妊娠中のこと。

仕事から先に帰ってきた方が

夕飯を作ると言うルールになっていて、

ある日、私が先に帰ってきたので、

夕飯を作るため、キッチンで野菜を刻んでいた。

すると、急激に気持ちが悪くなり、

それ以上続けると吐きそうになるため、

仕方なく、床に座り込んでしばらく休んでいた。

妊娠初期の悪阻(つわり)だった。

休んでいる間に、夫が帰宅し、

「あれ、どうしたの?」

座り込んでいる私を見て、夫が尋ねた。

「ちょっと、気持ちが悪くなったから休んでたの。」

普通、こういう場面では、

「そうなんだ。大丈夫?」など、

相手を気遣う言葉が出てくるように思っていたが、

夫が放った言葉は、予想に反して、

「どうせ、仮病だろ。」という一言・・・。

何故そうなる?? 

まず、理解ができない。

私は、悲しみと怒りで涙がこぼれ、

「体調が悪い時に、

なんでこんなことを言われなければならないの。

なんで、こんな人と結婚してしまったのだろう。」

と心の中で呟いていた。

「信じられない。なんでそんなことを言うの??

私が今まで、仮病なんて使ったことがある?!」

私は夫を責めた。

「・・・。」

夫は黙っている。

私は、ふと思った。

「分からないのだ」と。

「妊娠中は、悪阻というのがあって、

食べ物の匂いを嗅いだだけでも、気持ち悪くなったり

することがあるの。そのせいなんだよ。

悪いけど、野菜の匂いが耐えられないから、

代わりに料理してもらっても良い?」

「ふーーーん・・・。」

本当かよ、という疑いを滲ませながら、

夫は、渋々、私に代わって料理の続きを始めた。

「先が思いやられる・・・」

暗い気持ちに包まれる出来事でした。

そんな中、職場も家庭も上手くいかなくなった、

決定的な出来事が起こった。

職場で、私が患者さんの対応をしていると、

その様子を上司が他の同僚と一緒にニヤニヤと笑いながら見ていることに気づいた。

何かヒソヒソと話をしていて、悪口を言っている空気が、

ほんの数メートル先から伝わってきて、とても恐さを感じた。

患者さんの対応後、

上司と同僚から「ねえ、あの人に、なんでこういう事していたの?」と

馬鹿にするような言い方で聞かれ、「●●だからです。」私は短く答えた。

すると、「ふーーーん。」と言って、

また二人で顔を見合わせてニヤニヤ笑っている。

「何か、問題がありますか?」と私が尋ねると、

「いいや、別に、、。」と言って、意地悪く笑っている。

何か問題があるのならきちんと言って欲しかったが、

それもせず、ただニヤニヤ笑っている二人を見て、

その場から立ち去った。

悔しさと苛立ちと不安の入り混じった複雑な感情が心の中に渦巻いていた。

帰宅後、出来事を思い出してしまい、

耐えきれずに涙を流してしまった。

夫が後から帰ってきて、泣いている理由を尋ねられて、、

だけど、夫には、これまで何度も

傷口に塩を塗り込むようなセリフを言われてきたので、

これ以上傷つきたくなかった。

私は、「言いたくない、放っておいて欲しい。」と頼んだ。

それでも、何度もしつこく聞いてくるので、

仕方なく状況を説明することに・・

そして、話したことは誰にも言わず、

何も聞かなかったことにして欲しいと、何度も何度も念を押して頼んだ。

もし、こんな風に私が感じているということが職場で知れ渡ったら、

更に居場所がなくなることは明白だった。

当時、私と夫は同じ職場に勤めていたので、

特に知られたくないと思ったのだった。

ところが、私と話をした翌日、

夫は、私と約束していたにも関わらず、

彼自身の勝手な判断で、私の直属の上司より、

さらに上の役職である科長に事態を報告してしまっていた。

彼の中の正義感からの行動だったのだが、それが私を余計に苦しめた。

私の知らないところで、

科長と上司と夫の3人で話し合いがもたれていて、

夫は、上司を責めるようなことを科長の目の前で話したらしい。

夫自身は、「当然のことだ。」という様子だったけれど、

上司の気持ちを考えるといたたまれない気持ちになった。

そして、さらにその翌日、上司と私とで面談することになり、

上司からは、私を傷つけるようなことをして、

申し訳なかったと謝罪されたが、

その出来事は、上司との関係修復をさらに遠のかせることになってしまった。

上司は、私が帰宅後に上司の悪口を夫に吹聴していると思い、

今までとは違い、表立って失礼な事はされなくなったけれど、

代わりに、冷たく突き放す対応に変化していった。

そんなこともあり、一番身近な存在である夫は、

たとえ正義感であっても、私の気持ちや立場を考えておらず、

何をするか分からないため、

愚痴を言う事も相談することもできないと感じたのだった。

職場でも人間関係に悩み、

家でも夫には相談できない、理解もされない。

フルタイムで仕事をしていて、

帰宅後は授乳と家事、寝かしつけ、

疲れても愚痴を聞いてくれる相手もいない。

朝の支度は、赤ちゃんの保育園の支度や授乳が加わり、

時間に追われる日々。

職場は、弁当を持っていく必要もあり、

夜のうちに用意していた。

夫は、後から起きてきて、自分の支度だけ・・・

言えばやってくれるけれども、一つ一つ説明しなければいけない・・・

本当に、疲れ切っていた。

電動機付き自電車で職場へ向かうために急坂を上がる時、

「このままでは、ストレスと疲労で癌になり、早死にするかもしれない」

と感じたことを、今でも強烈に覚えている。

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