罪悪感と向き合うシリーズ番外編

罪のない子供たちに毒入りサンドイッチを与えてしまった兵士の話

べトナム戦争中、仲間の兵士を殺され、

怒りと復讐心に駆られた一人のアメリカ兵がいました。

彼は、仲間を殺された復讐心から

仲間の兵士を殺した軍隊のいる村の道端に

毒入りのサンドイッチが入った紙袋を置き、

木陰から、そっと様子を覗いていました。

しばらくすると、村の子供たちが5人ほどやってきて、

紙袋に入った、おいしそうなサンドイッチを見つけました。

お腹が空いていた子供たちは、

喜んで口に入れて、噛み締めました。

しばらくすると、子供たちは、次々に悶え、苦しみはじめました。

そして、苦しみの中で、亡くなっていきました。

その様子を見て、兵士は後悔で胸がいっぱいになり、

眠れなくなりました。

夜な夜な、子供たちが寝室に現れて、兵士を見ています。

兵士は、その出来事を誰にも話せず、

ずっと心の中に閉じ込めていました。

兵士の不眠は、母国に帰還しても続きました。

母親にだけは、打ち明けることができましたが、

「戦争中には、そういう悲しい事が起こるものよ。」

という母親の言葉も、彼を救う事ができず、苦しみ続けました。

15年間、固形物を飲み込むことができず、

フルーツジュースか果物しか喉を通りませんでした。

完全に心を閉ざし、

他人との意思疎通も拒んできたそうです。

心の苦しみから、ベトナムの僧侶ティクナットハンのもとを訪れた兵士は、

戦争でトラウマを抱えていた他の兵士や、

僧侶達とともに数日間を過ごしました。

静かな日々を過ごしながら、

周囲の温かい心遣いが助けになり、

兵士は徐々に、会話をするようになり、

少しずつ、心を開きはじめます。

15年間のうちで、集団の中ではじめて安心して過ごすことができる時間でした。

そして、戦争のトラウマと向き合うグループワークが開かれた時に、

それぞれが苦しんだエピソードについて

語り合う時間がありました。

その時に兵士は、ずっと、心の中に閉じ込めていた、

子供たちに毒入りサンドイッチを食べさせてしまった話を

勇気を振り絞って、彼らの前ですることができました。

その話を聞いた僧侶は、

グループの温かい雰囲気の中で、

「あなたは、なぜここで、いつまでもくよくよと泣いているのですか。

あなたが5人の子供たちを殺してしまったのなら、

今、世界中で苦しんでいる、それ以上の数の子供たちを救う事も出来るはずです。

もし、あなたが、100人の子供を救ったら、

その子孫はそれ以上の数になり、世界に広がっていくでしょう。」

と、兵士にメッセージを送りました。

話を聞いていた他の兵士や他の僧侶も、

兵士の痛みを共に感じ、お互いに温かい気持ちを送りました。

この出来事をきっかけに、

子供たちを殺してしまった兵士は、

世界で苦しんでいる子供たちを救うための活動を始めました。

一人で苦しんでいた時の苦しみは、

この出来事をきっかけに、活動することへのエネルギーに変容していきました。

あとがき

ティクナットハンというベトナムの僧侶についてのテレビ番組の特集で

語られていたお話を紹介させて頂きました。

番組の詳細を確認してから書こうとしたのですが、元の映像が見つからなかったため、

昔の記憶と、自分が持っているティクナットハンの本の内容を参考にして書きました。

そのため、細部の情報や具体的な言葉は、実際のものと違っていると思います。(ごめんなさい!)

罪悪感と向き合った人の変容について、

感動的なエピソードだったので、ご紹介したくなりました。

お読み下さり、ありがとうございました。

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