NHKの番組で知った素晴らしい人
ティクナットハン師とは
数年前、たまたまテレビで「こころの時代」という番組を見ていました。
その時紹介されていたティクナットハンという禅僧の話に釘付けになり、
気づけば、最後は感動で涙を流していました。
番組の紹介によると、
ティクナットハン師は88歳、ベトナムに生まれた禅僧。
引用:NHK「こころの時代」禅僧ティクナットハン(1)怒りの炎を抱きしめるより
その教えは国や文化、宗教の枠を超えて世界中から支持を集めている。
アメリカやイギリスの議会、国連、世界銀行、Googleなどの世界的企業、教育や医療現場にまで及ぶ教え。真髄は怒りをいかに沈めるか。ブッダが悟りに至った、瞑想による実践です。共鳴したキング牧師から、ノーベル平和賞候補にも推薦されています。
世界的に活動されている方ですが、日本では意外と知られていない気がします。番組で初めて知った時には、もっと早く出会いたかったと感じました。
他者と争わない実践的な教え
自分自身に立ち返る
番組の中で紹介されていた、ティクナットハン師の話の中からご紹介します。
以下、ティクナットハン師のお話です。
あなたはひとつの庭です。この庭に帰ってきて、よく手入れをしてください。
良い種だけに水をやる方法を身につけておくと、落ち着き、安らぎ、希望、喜びにみたされます。
そうして初めて、他の人の庭の手入れを手伝うことができます。
でもまずは、自分自身に立ち返って自分の庭を手入れします。
それが第一歩です。
実践を知らない人は常に相手を変えようとします。
一緒に暮らしていくために「あなたはこう変わるべき、ああすべきだ」など
今度は相手も要求してきます。どちらも自分に立ち返ることを知らないのです。
自分の庭の手入れを身につけて、相手も自分の庭を美しくできるように手伝ってあげてください。
すると相互理解が生まれます。深く心を分かち合うことができます。
引用:NHK「こころの時代」禅僧ティクナットハン(1)怒りの炎を抱きしめるより
心理学でも「過去と他人は変えられない」と言いますが、ティクナットハン師も他者を変えようとするのではなく、まずは自分の心の手入れをすることが大切というお話をされています。
人間関係において、まずは自分自身を見つめること、それが他者との関係に活きることを説明されていると思います。
怒りの種は早めに摘み取り、良い種を心に育てること。自分自身を見つめること。
その繰り返しが、他者との相互理解につながり、争わなくなる。
自分に立ち返ることが、他者への理解にも繋がるということだと思います。
余談ですが、個人のやり取りも国と国のやり取りも共通したものがあります。
国を作るのも人の心です。
一人一人がこころの手入れをすることが、本当の意味で、世界平和に一番早くたどり着く道なのではないかと思いました。
他者への理解を深めるヒント
差別について
以下に、ティクナットハンが語っていた話を書きます。
仏教の唯識学の中で、この言葉はとても重要です。
すべてを含む阿頼耶識も中にあるすべての種子も本質は定められない。
善くも悪くもない。好きでも嫌でもない。
木そのものは善くも悪くもありません。
空気そのものも善くも悪くもありません。
現実のありのままの姿をしているだけですから。
たとえば、あなたの愛する人を見つめてみると
あなたの表層意識を通して見ているので
ありのままの姿で見てはいません。
あなたが勝手に心で見た人を作り出しているのです。
誰かに恋したとき、ありのままのその人に恋しているわけではありません。
普通は、あなたの心が描いている人に恋しているのです。あなたの意識の表れです。
しかし阿頼耶識は違います。(無分別の)知恵があります。
「これは泥、これは蓮」
「私は蓮だけが欲しい、泥は欲しくない」と
そのように表層意識は働いています。
いつも差別しています。
=ナレーション=
差別とは自分の意識が作り出したもの
それに気づくことによって、他者への怒りや憎しみが変容するというのです。
引用:NHK「こころの時代」禅僧ティクナットハン(1)怒りの炎を抱きしめるより
仏教の教えは奥が深いですね。
私たちは皆、表層意識というフィルターを通して世界を見ているのだと気づかされました。
決め付けることは、差別を生む。
そのことに気づくことで、怒りが変容する。
ありのままを見つめるというのは、なかなか難しいものですが、
一歩下がって見つめる自分を作れたら、少しは俯瞰で物事を見られるのかなと思いました。
ただ、恋は冷静じゃつまらなくなってしまいますね。笑
少しづつ、ありのままの相手を受け入れていけたら恋が愛になるのかもしれません。
またまた余談ですが、恋が愛に変わってから結婚する方が、失敗が少ないかもしれませんね。
切り離すことはできない、すべては繋がっている
これもまた、ティクナットハン師の話の中からです。
あなたが政治家で左派であるとして、
自分と国の苦しみを右派のせいにしたとします。
でも「相互共存の教え(インタービーイング)」から考えれば
左は右なしに存在することはできません。
しかし、多くの人々はそのことに気づかずに反対側が消えることを願っています。
この蓮の茎を見てください。
ここが左側、あなたの左側は私の右ですね。
こちら(左)が共産主義とか社会主義とか
そしてこちら(右)が右派の人々だとしますね。
あなたが左側にいると右側の人が敵に見えるでしょう。
政治の世界から消えて欲しいと思っているかもしれません。
でもそれは賢明ではありません。
右がなくなると左のあなたも、もうそこにはいないのですから。
左側が右側を取り除こうとして切り落としたとします。
左と右を分けている点がどこかに1つある…でもちょっとこちらが長すぎますね。(蓮の茎をナイフで切り落とそうとしている)
多数派だから…相手側を切り落とすためにここを切るとします。(切り落として、茎を見つめている)
「ああ、右側がなくなってくれた。」と思っています。
すると今度はここに(右が)現れます。右の中に左があるからです。
あなたが社会主義者である場合、その中にも革新的な人と保守的な人がいて、彼らは右側の人とそっくりでしょう。
そのように右があれば必ず左があります。相互に共存していますから。
左だけが存在することはありません。それが真実です。
これがすべての礎となっています。
これがサハーブッタアシュヴァヤ相互共存です。
その知恵に反することは真実ではありません。
あなたは独立した存在ではありません。宇宙のすべては深く関わって存在しているのです。
雲や石ころや川や星、すべてがこの相互共存インタービーイングという法則から成り立っています。
引用:NHK「こころの時代」禅僧ティクナットハン(1)怒りの炎を抱きしめるより
すべてはつながっている。
自他の区別なく愛することのできる境地に達する考え方だと思います。
私はここまで深い理解はなかなか日常の中で出来ていません。
言葉のみでは伝えきれないのですが、ティクナットハン師を映像で見ていると、
優しい笑顔と、包み込むような雰囲気を感じられます。
その雰囲気に魅せられてファンになってしまいました。
怒りの面倒をみる
ティクナットハン師の言葉は続きます。
全てはあなた自身から始まります。
あなたはすべての行動の源泉です。
あなたが怒っているとき「怒り」の面倒を見ないで怒りから逃れようとしていたら、
たとえあなたが仏教書を読んでいたとしても仏教の実践をしていることにはなりません。
もし、怒りが湧き上がってきたら、自分の怒りを認識しなければなりません。
静かに集中して呼吸し歩くことによって、あなたの中の怒りがあることに気づきます。
怒りを優しく抱き、深く見つめて何がその怒りの根にあるのか見ていきます。
それが間違った認識や優越感、劣等感によって抑圧された強い感情からなのかどうかをみるのです。
引用:NHK「こころの時代」禅僧ティクナットハン(1)怒りの炎を抱きしめるより
ひとりひとりが、この考え方を知って実践したら
いじめや暴力、犯罪が消えていくのではと思います。
学校の授業で、道徳という科目がありましたが、こういった考え方を伝えていく事も大切ではないかと思います。
特に日本では、日常的に宗教の話はしないのが一般的ですが、
宗教というのは、人生や生き方に深く関わる大切な部分であるが故に、
触れにくい部分でもあると思います。
同じ宗教に属する人が多い国では、一般的に見られる道徳的観念が、日本ではみられない。
例えば、電車やバスで席を譲る行為を当たり前にできる国とそうでない国があります。(もちろんすべての人がという訳ではありません。)
しかし、なにか特定の宗教に属することが大切と言いたい訳ではなく、
本当に大切な根本の部分。
これを共有することは、未来をどんな世界にしていくかという面で重要だと思います。
ティクナットハン師については、以下の記事にもまとめています。