そんな頃、少し風変りな人に出会った。
友人から私と話をしてみたいという男性がいるから、
会ってみないかと誘われた。
彼は、同じ学校の違うクラスに所属している人で、
校内で見かけたことはあったかもしれないが、接点はなかった。
彼は、私を見かけて、どうやら気に入ってくれたらしい。
珍しい事もあるものだ。
名前を聞いても、顔が思い浮かばなかったため、
どんな人だろう?と気になり、
私は、その人に会ってみることにした。
会った時に、
「ああ、この人知ってる。」と感じた。
それは、見かけたことがあるからだったのか、
今となってはよく思い出せない。
口には出さなかったけれど、
なんとなく空気感を知っている感じだった。
自分から会いたいと言った割りに、
あまり喋らない。
襟元のボタンを一番上まできっちりと閉め、
うつむき加減で恥ずかしそうに座っている。
積極的なのかシャイなのか・・
よく分からないその人と、
時々、お茶したりするようになった。
真面目な人だった。
いつも分厚い教科書を何冊もカバンに詰め込んで、
往復の電車の中でも勉強していた。
彼と同じクラスに高校時代からの友人がいたので、
彼と付き合っていることを話したことがあった。
「ああ、一番いいんじゃない?真面目そうだし。」
と言われたことを覚えている。
彼は、1部の人達に宇宙人と呼ばれていたらしい。
確かに、彼はちょっと、変わった人だった。
考え方とか、感性とか、ちょっと独特な感じ。
けれど、本人にはそれが分かってない。
本人は、自分はごく普通だと、疑いもなく思っている。
そのギャップが面白かった。
そんな彼と結婚し、子供が生まれた。
子供との時間は本当に幸せなものだった。
赤ちゃんのお世話は、眠れなかったりして大変ですが、
とにかく可愛くて、一日中見ていても飽きない。
日々、変わっていく。
笑った。
寝返りができた。
立っちができた。
まだ、言葉が言えない時、
赤ちゃんは私の事を「あんにー」と呼んでいるようだった。
私が、授乳している時、
赤ちゃんは私の事をジーっと見つめていた。
その目を見て、「なあに??」とよく話しかけていた。
多分、それを覚えて、
私の事を「なあに??」だと思ったのかもしれない。
うまく発音できなくて、
「なあに?」が「あんにー」になった気がする。
とにかく、一つ一つの仕草が可愛くて、
離乳食を作るのも、今日は何味にしようかな、、どんな反応するかな?と
大変さも気にならないくらい、幸せを感じていた。
この子に会えて、良かった。そう思った。
➡つづきへ
⇦前に戻る